うまいきしめんはここにある! 透き通った極薄麺の向こうに見えるのは?「えびすや猫洞店」

きしめん=薄いのは当たり前だが、透き通るほどの薄さは名古屋でも随一!
大竹敏之 2026.09.21
誰でも

透き通った美しい手打ち麺

きしめん=平たくて薄い麺、というのは皆さんご存じの常識(ですよね?)。しかし、何事も過剰に突き詰めていくのは職人のサガなのか、それが顕著に表れているのが近年のきしめんの幅広化。当メルマガでも何度も取り上げてきたように、もともと幅が広いきしめんを「もっともっと!」とより幅広く打つ店が増えています。

そんな中、“薄い”というきしめんのもうひとつの特徴を究めんと取り組んでいるのが「えびすや猫洞(ねこがほら)店」です。

きしめんはご覧の通り向こうが透けて見えるほど極薄。温かいかけ、冷たいころ、ともに850円

きしめんはご覧の通り向こうが透けて見えるほど極薄。温かいかけ、冷たいころ、ともに850円

麺はまさに極薄! 向こうが透けて見えるほどで、その上、幅も薄さも測ったように均一。このほれぼれする美しいきしめんを、機械に一切頼らない純手打ちで打っているのです。

シルクのようにしなやかな麺は舌をそっとなでるようになめらかに滑っていき、こんなに薄いのにもっちり感もあり。上品な舌ざわりとのどごしは他に比類がありません。つゆも見た目は濃いのですがすっきりしていて、後味にもまた品のよさを感じます。

先代の思いを継承した薄くて食べやすいきしめん

「薄さは先代からのこだわりです。先代にはまだおよびませんが、もっと薄くしたいと思ってやっています」とは店主の中西健太さん。高校時代のバイト先だったこの店に23才で弟子入りし、2024年に35才で先代から事業継承してのれんを引き継ぎました。

薄くするには当然、延ばす工程の手間が増える上、麺が破れやすくなるなど扱いもデリケートになります。加えてゆでる際もベストなタイミングがピンポイントになるため細心の注意が必要。それでも薄さを重視するのは、職人としての技術の追究はもちろんですが、むしろお客本位の思いがあるからです。

「うちは長く通ってくれるご家族連れのお客さんが多い。薄い方が小さなお子さんもお年寄りの方も食べやすいと思うんです」

2代目店主の中西健太さんは1989年生まれ。「先代は父のような存在。その姿に憧れ、“あんな風に打てるようになりたい”との思いで技術を磨いてきました」

2代目店主の中西健太さんは1989年生まれ。「先代は父のような存在。その姿に憧れ、“あんな風に打てるようになりたい”との思いで技術を磨いてきました」

麺打ちは先代の技や教えを忠実に守っている一方、自分なりの工夫やアイデアも取り入れています。季節によって変えるダシの比率、かつてはなかった多彩な季節メニュー、もちやチーズといったトッピングのバリエーションなど・・・。小麦も愛知県産のきぬあかりに段階的に切り替えました。「最初はうまくつながらなくて苦労したんですが、どんどん品質がよくなってきた。まずは味噌煮込み用に使い始め、その後きしめんにも使うようになりました。きしめんにしても、うどんらしいもっちり感が出るのが魅力です」

冷たい麺に大ぶりの海老天、たっぷりの大根おろしをトッピングしたえびおろしは「えびすや」名物。1600円

冷たい麺に大ぶりの海老天、たっぷりの大根おろしをトッピングしたえびおろしは「えびすや」名物。1600円

きしめんと並ぶ名古屋名物、味噌煮込みうどんもかつては冬限定だったところを通年メニューに。一般的にイメージされる“太くて固い”麺ではなく、きしめんのような平打ちが特徴です。「薄い分、つゆがしみてより柔らかくなって食べやすくなる。年配のお客さんも喜んでくれます」とこれもやはりお客第一の姿勢が、麺が平たい理由です。

みそ煮込みの麺もまるできしめんのような平打ち。ただし、煮込み用独特の塩を使わずに打つ麺で、きしめんとは別物。1300円

みそ煮込みの麺もまるできしめんのような平打ち。ただし、煮込み用独特の塩を使わずに打つ麺で、きしめんとは別物。1300円

うどん屋をはじめとする個人店にとって最も大きな課題のひとつが後継者。子どもが継がなければその代で閉店、と思われがちです。しかし、技術や思いを受け継ぐ人材がいれば、承継者は親族でなくてもいいはずで、愛されている店であればなおさらです。「えびすや猫洞店」は弟子が尊敬する師匠の店を受け継いだ、という点でもこの業界にとって明るい可能性を示してくれる一軒だといえます。その象徴ともいうべき師匠ゆずりの極薄きしめん。透き通った麺の向こうにきしめんの未来も見通せそうな気がします。

「えびすや」は当メルマガでも何度も取り上げている名古屋発のうどん店で、のれん分けが何軒もある。「えびすや猫洞店」は本店直系ではないため、店名を四角で囲んだ他の「えびすや」とは異なり、店名を丸で囲んだロゴを使用している

「えびすや」は当メルマガでも何度も取り上げている名古屋発のうどん店で、のれん分けが何軒もある。「えびすや猫洞店」は本店直系ではないため、店名を四角で囲んだ他の「えびすや」とは異なり、店名を丸で囲んだロゴを使用している

■えびすや猫洞店

・名古屋市千種区猫洞通3-29

・℡052・782・4187

・創業 1979年

・11:00~15:00,17:00~20:30(L.O.)

・水曜休

・36席

・駐車場4台(夜は2台)

・地下鉄本山駅より徒歩10分

・きしめん850円

・きしめん 麺/幅1・2㎝、厚み1mm

・小麦粉/金トビ志賀 きぬあかり

・つゆ/帝国醸造・溜まり醤油

・ダシ ムロアジ、宗田カツオ

・ざるきしめん950円

・その他メニュー

かけうどん700円、冷やしたぬき950円、えびおろし1600円、カレーうどん1000円、ざるそば950円、玉丼850円、みそ煮込み1300円

ビルの1階ながら犬矢来やししおどしを配して和風の趣がある店構え。最寄りの地下鉄本山駅は名古屋駅から16分

ビルの1階ながら犬矢来やししおどしを配して和風の趣がある店構え。最寄りの地下鉄本山駅は名古屋駅から16分

※写真撮影/すべて筆者

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