うまいきしめんはここにある!トッピングも幅も値段も昔ながらの“ザ・きしめん~「三浦屋」
きしめんの王道スタイルは意外とレア(?)
平たい麺に濃いめの茶褐色のつゆ、トッピングは油揚げにほうれん草、ふちの赤いかまぼこ、そしてゆらゆらゆれる花かつお。きしめんと聞けば、多くの人はこのビジュを思い浮かべるのではないでしょうか?
ところが、意外やこの通りのきしめんにはなかなかお目にかかれません。有名な新幹線のホームの「住よし」も、花かつおのたっぷり加減は理想的ですが、彩りとなるほうれん草とかまぼこは載っていません。かまぼこを載せない店は思いの外多く、特にふちの赤い通称“名古屋かまぼこ”にはめったにお目にかかれません。当メルマガでもこれまでに紹介したきしめんをあらためて見直したところ、この黄金トッピングを採用しているのは「川井屋本店」のみでした。
見た目はもちろん庶民的な価格も昔ながら

これぞ王道!の「三浦屋」のきしめん。今どきうれしい一杯500円
そんな実はレアな王道のきしめんを食べられるのがここ「三浦屋」です。油揚げ、ほうれん草、名古屋かまぼこ、花かつお、茶褐色のつゆ、そして何より昔ながらのあまり幅広ではない麺。ついでにいえば一杯500円の今どき珍しい庶民派価格! 今や名古屋人の概念の中にしかないのでは・・・?と存在が危ぶまれた“ザ・きしめん”はここにあったのです。
麺はやや細め。最近は幅広でコシを強いきしめんが流行りですが、幅はあまり広くなく、適度に柔め。ズズッ!とすすりやすいのもやはり頭の中にあるイメージ通り。つゆは醤油辛さを控えめにしてその分ダシのうまみをしっかり。この地域の雑煮のすましにも通じる優しく上品な味わいで、最後まで飲み干せます。
ゆでたてを重視しきしめんをメインに
もうひとつ珍しいのがメニューにうどんがないこと(味噌煮込みうどんはあり)。名古屋では2000年代初め頃までの“きしめん冬の時代”に品書きからきしめんをなくしてしまう店もあったのですが、ここはそれとは逆にうどんを外してきしめんを残したのです。
「18年前にメニュー改定をして、品書きをきしめんメインに書き換えました」と3代目の三浦加守男さん。ゆでたてを出したい、というのがその理由。「名古屋のうどん、きしめんはボーメ度(塩分濃度)が高いので、讃岐うどんなどと比べてゆで時間が長い。うどんは温かいかけだと12分、冷たいころだと16~17分もかかります。対してきしめんはかけ4分、ころ7分。うどん屋は昼のお客さんが多く、そんなに待たせられないし、一緒に来たお客さん同士で提供時間に差が出てしまうのも申し訳ない。だからといってゆでおきはしたくないので、うどんの注文があまり入らないようにしたんです。長らくそうやっていたらうどんがほとんど出なくなり、4年ほど前にうどんを打つのをやめました」

「必ず注文を受けてから麺をゆで、一番おいしいゆでたてを提供するようにしています」と店主の三浦加守男さん
麺の幅と小麦粉。守ることと変えること
麺の幅が狭い理由は単純で、「製麺機の刃がこの幅にセッティングしてあるんです」と三浦さん。「自分で簡単に調整できるものではなく、だったらお客さんが食べ慣れたままのがいいとこの幅を守っています。同じ製麺機を使っているうどん屋はもともとたくさんあったんですが、廃業してしまった店が何軒もあるので、古くからのお客さんにとっては懐かしく感じられるかもしれません」

夏の「きしころスタンプラリー」用の限定メニューも。紅しょうが天おろしきしころ900円
かといって変化を拒んでいるわけではありません。小麦粉は2010年代に入って愛知県産小麦・きぬあかりを採用。「香りがすごくよくて、切るとぶわーッと小麦の風味が広がるんです。最初は味噌煮込み用に使ってみて、仕上がりがいいのできしめんもきぬあかりに切り替えました」と三浦さん。守るべきは守り、変えるべきところは変える。そのバランスの中で、食べる人が安心感を得られる一杯をつくり続けているのです。

味噌煮込みうどんの麺も同じ製麺機で切るのでかなり細め。塩抜き麺のため、煮込んでもきしめんほど膨らまないのでより細さが際立つ。このご時世にありがたい780円のお手頃価格
ノスタルジックなスタンダードきしめん。こういう王道があるからこそ、幅広などのニューウェーブも安心して楽しめるというもの。昔ながらのきしめんを食べたい!というオールドファンはもちろん、ビギナーもまずここで食べておくと自分の中での基準ができ、きしめんの多様性への理解が深まるんじゃないでしょうか。

小上がりとテーブル席で構成される店内も古きよき麺類食堂の趣
■三浦屋
・名古屋市東区出来町3-3-9
・1949年頃創業
・052・722・0907
・11:30~14:00、17:30~21:00
・日曜休
・地下鉄今池駅より徒歩約20分
・駐車場3台
・30席
・きしめん 500円
・きしめん 幅/7・5mm・厚さ1・5mm
・小麦粉/きぬあかり
・ダシ/ムロアジ、サバ
・きしめんころ500円
・その他メニュー/玉子とじきしめん600円、天ぷらきしめん700円、海老おろしきしめん1380円、きしめん定食850円(ランチタイムサービス750円)、味噌煮込みうどん780円、カレー煮込みうどん900円、玉子丼650円、中華そば680円
※写真撮影/すべて筆者
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