うまいきしめんはここにある!~きしめんのルーツ(?)、芋川うどんを復刻「きさん」

きしめんのルーツといわれる芋川うどん。刈谷市の「きさん」ではこれを苦心の末に復刻し、きしめんとの食べ比べもできる
大竹敏之 2026.07.22
誰でも

弥次さん喜多さんも食べた(?)芋川うどんとは?

平打ちのうどん、という以外はベールに包まれている芋川うどん

平打ちのうどん、という以外はベールに包まれている芋川うどん

“諸説あり”のきしめんのルーツ。そのひとつが「芋川(いもかわ)うどん」説です。芋川うどんは江戸時代に三河国芋川(現在の愛知県刈谷市)の名物だった平打ちのうどん。『東海道中膝栗毛』(十返舎一九)や『好色一代男』(井原西鶴)に記述があります。江戸の紐革うどんや群馬県桐生市のひもかわうどんは、芋川うどんがなまったものだと推測され、名古屋のきしめんもこれを起源とする説があります

刈谷市の芋川うどんは完全に途絶えてしまっていましたが、これを現代によみがえらせたのが「きさん」のいもかわうどんです。

地域の名物を!との思いで苦心を重ねて復刻

「刈谷市はトヨタの企業城下町で、国内外からお客さんが来るのにおもてなしにふさわしい名物がない。そこで、地元の商店主らが中心になって、江戸時代に“東海道随一”とうたわれた芋川うどんを復刻させようということになったんです」と「きさん」の店主、都築晃さん。

とはいえ、文献に残る芋川うどんの具体的な特徴は平打ちということだけ。そこで、当時あったはずの材料や道具から、石臼挽きの小麦の全粒粉を使うに思いいたりました

しかし、全粒粉は粒が粗いためつながりにくいのが難点。そこで活きたのが開店当時からの二本柱であるそばと味噌煮込みうどんの麺打ちの技術でした。

「うどんやきしめんのように塩を加えると発酵してしまうので、味噌煮込み用の麺の要領で真水でこねることに。でも、そのままでは延びにくくて平打ちにするのが難しいので、そばと同様によく踏みよく寝かして、生地に粘りが出るようにしました」(都築さん)

こうした苦心の末に幻のいもかわうどんを完成させたのが2007年のことでした。

店主の都築晃さんは1972年生まれ。うどん屋一家に生まれ育ち、26才で独立して「きさん」を構えた

店主の都築晃さんは1972年生まれ。うどん屋一家に生まれ育ち、26才で独立して「きさん」を構えた

きしめんとの食べ比べは夏限定

江戸時代の東海道名物・いもかわうどん、そして名古屋名物のきしめん。夏限定の冷たいぶっかけ式のメニュー・今昔食べ比べでは、それぞれの麺の特徴がよく分かります。

きしめんは愛知県産小麦・きぬあかりの特徴がよく活かされて食感はもちもちで、小麦の甘味が上品。いもかわうどんはちょっとざらりとした舌ざわりで、噛みしめるほどに野性的な香りがじんわりと広がります。きしめんはうどんにひと手間かけて薄くするため、もともとちょっと上等なものと位置づけられます。ルーツともいわれるいもかわうどんと食べ比べると、確かに品よく進化した麺料理だと実感できます。

いもかわうどん+きしめんの今昔食べ比べ1300円。夏の「きしころスタンプラリー」用メニューだが、グループで予約すればその他の季節でも食べられる

いもかわうどん+きしめんの今昔食べ比べ1300円。夏の「きしころスタンプラリー」用メニューだが、グループで予約すればその他の季節でも食べられる

こちらも「きしころスタンプラリー」用に新開発した2026年夏限定メニュー、えび天コロきしめん1500円。干し海老を使ったジュレやジュレのシャーベットをトッピング。店主のフレンチの経験を活かした一品

こちらも「きしころスタンプラリー」用に新開発した2026年夏限定メニュー、えび天コロきしめん1500円。干し海老を使ったジュレやジュレのシャーベットをトッピング。店主のフレンチの経験を活かした一品

温かいいもかわうどんは一年中食べられる

通年で食べられるのは温かいかけ。麺にたまり醤油ベースの濃いめのつゆがじわじわとしみて、噛むとよりじんわり味わい深く。ダシは宗田ガツオとムロアジを控えめにして鰹の本枯れ節や真昆布を使っているため、濃口の割に後味はさっぱりしています。

いもかわうどんのきじめん1500円。きしめんの名前の由来にちなんでのメニュー名だが、現在は県内産鶏肉を使用

いもかわうどんのきじめん1500円。きしめんの名前の由来にちなんでのメニュー名だが、現在は県内産鶏肉を使用

きしめんのルーツに思いをはせ、食べ比べることできしめんの魅力や特徴をあらためて気づかせてくれるいもかわうどん。これが進化してきしめんになったのか、はたまたネアンデルタール人と現生人類のように実は別系統なのか、麺の歴史ミステリーにまで想像を膨らませながらすすってみるとより味わいも深くなるんじゃないでしょうか。

テーブル、小上がり、座敷が揃う店内。自家菜園で野菜も育てていて、メニューに使用している他、店内で販売も

テーブル、小上がり、座敷が揃う店内。自家菜園で野菜も育てていて、メニューに使用している他、店内で販売も

■きさん

・1999年創業

・愛知県刈谷市一ツ木町7-14-1

・℡0566・27・8537

・11:00~14:00、18:00~20:30(月・火は11:00~14:00)

・水木休

・駐車場8台

・名鉄一ツ木町駅または藤松駅より徒歩15分

・きしめん/ 幅2mm、厚さ2mm(いもかわうどん幅2・2mm、厚さ3mm)

・小麦粉 /きぬあかり(いもかわうどん 複数種の全粒粉をブレンド)

・つゆ/ヤマヤ醤油店・天分だまり、極上

・ダシ/鰹本枯れ節、宗田カツオ、ムロアジ、真昆布

・その他メニュー

いもかわうどんざる1000円、かけうどん700円、かけそば850円、ざるそば1000円、味噌煮込みうどん1100円、味噌煮込み定食1300円、ソースかつ丼600円

国道23号名豊道路一ツ木インターから約3分。店名は織田信長が稲葉山を岐阜に改名した際に「岐山(ぎざん)に興って天下を定む」と謳ったことにちなみ、おいしさの天下一を目指す心意気から名づけたそう。「ぎざん」を「きさん」としたのは、つゆ・ダシに濁りがあってはいけないと縁起をかついだとのこと

国道23号名豊道路一ツ木インターから約3分。店名は織田信長が稲葉山を岐阜に改名した際に「岐山(ぎざん)に興って天下を定む」と謳ったことにちなみ、おいしさの天下一を目指す心意気から名づけたそう。「ぎざん」を「きさん」としたのは、つゆ・ダシに濁りがあってはいけないと縁起をかついだとのこと

※写真撮影/すべて筆者

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