うまいきしめんはここにある!~もっちもちの純手打ち麺「香流庵」
もちもち食感は是非“ころ”で!
つや感がみずみずしい麺は、もち肌のようにもっちもちで、一瞬和甘味か・・・?と思うほどに甘やか。やや濃いめ&甘めに仕上げたざる用のつゆも、この甘みをさらに際立たせます。具はネギ、しょうが、大葉、ゴマの薬味のみ。麺だけに意識を集中させて食べるには、このシンプルなころきしめん一択!と筆者はいつも決めています。涼やかさを感じる夏はもちろん、寒い冬だろうがこれは譲れません。

きしめんころ750円。薬味だけでシンプルに麺の味わいを楽しむ
へそ出しなど名古屋独自の技法を駆使した純手打ち
この極上の麺は、すべて手作業の純手打ちでつくられています。「手打ちしか教えてもらっていないので機械が使えないんですよ」とちょっと苦笑いする店主の市原悟さん。初代の父・忠治さんはじめ名古屋の名人たちの姿に憧れて、自身も技を磨いたそう。生地のこねから包丁切りまで工程は何段階もありますが、早い段階の作業ほど重要だといいます。
「最初に小麦粉と水を混ぜる『水回し』が一番大事。二番目が次の『へそ出し』です。ここがうまく行かないと、その後の作業でどれだけ巻き返そうとしても納得の行く麺にはなりません」

2代目店主の市原悟さん。父親や名古屋の先達の指導を受けて身につけた「名古屋手打」の技を守り続ける
水回しで大切なのは天気を読むこと。水や塩の量は気温や湿度によって調整しますが、丸めた生地をひと晩寝かすため、翌日の天候を読み違えると、固くなったりダレてしまったりするのだとか。
続いて大変なのがへそ出し。きしめんを打つために不可欠な名古屋独特の工程で、団子状に丸めた生地の中心をギュッと押し込んでへそのような出っ張りをつくります。
「きしめんは生地の玉を中心から外へ向けて薄く延ばしていくので、核の部分に厚みがないと薄くなりすぎて破れてしまうんです。名古屋の生地は塩分が多くて固いので、しっかり押し込むのは親指がちぎれるくらい大変な作業ですが、延ばした時の表面のつや、のどごし、歯ざわりもここで決まるので手を抜けません」

へそ出しは名古屋独特の手打ちの工程。団子状にまとめた生地の中央をグッと押し込んでへそをつくる

へそ出ししたきしめんの生地。ひと晩寝かせて熟成させてから薄く延ばして切る
きしめんは薄い分熱が通りやすく、ゆで上げのタイミングにも細心の注意が必要。市原さんが師匠である父から叩き込まれた教えは「絹糸一本分の芯を残せ」。これによって生地にかすかに残った塩味が麺のうま味を引き出し、かつコシにもつながるのだといいます。
塩、醤油など調味料に独自のこだわり
さて、ここでふと塩について気になりました。聞けば「赤穂の天塩」を使用しているそう。塩田製法でにがりを含むのが特徴のブランド塩です。塩は麺を茹でる際に大半が抜けてしまいますが、生地にかすかに残り、これがうまみや独特の甘味にもつながっているのでしょう。ちなみに、本来は塩を使わずに打つ味噌煮込み用の煮込み麺にもこの赤穂の天塩を少し加えるそうで、その効果でもっちり感が生まれるのだといいます。

温かいきしめんももちろん美味。油揚げ、かまぼこ、ほうれん草(わかめに替わる時もあり)、そしてたっぷりの花かつおが踊る。770円
醤油は千葉県のヒゲタ醤油のこいくちがベースで、かけには名古屋・ヤマヤ醤油店の銘柄もブレンド。東海地方特産の溜まり醤油を使わないのは、名古屋のうどん店ではかなり珍しいのでは。江戸前のそばつゆにも通じるつゆのキリッとしたキレは、関東の醤油を使っているからなのかもしれません。「うちは味噌煮込みのつゆも、他のお店と比べるとややゆるめであっさりしているんです。親父が新潟県出身なので、それも影響しているのかもしれませんね」と市原さん。ちなみにつゆは醤油ベースの赤のみ。名古屋のうどん店は白醤油ベースの白つゆも用意してトッピングの具によって赤・白2種類のつゆを使い分けるのが基本ですが、赤のみというのもこれまたかなりレアです。

味噌煮込みうどんはこってり感をやや控えてあり親しみやすい。1200円
トッピング豊富なころきしメニュー
冷たいころきしめんメニューも豊富で、おろし、天ぷら、きのこ、焼き肉、そして名古屋らしいどてみそころなどのトッピングバリエーションが。つゆをお好みの量だけかけるぶっかけ系で、麺のぷるぷる感をより感じられます。

焼き肉おろしころ1400円。麺はきしめん、うどん、そばからお好みで選べる
麺打ちでは伝統的な「名古屋手打」の技法を愚直に守りながらも、素材選びには意外な独自性も。きしめんの食感の醍醐味に魅了されつつも、麺のうまみやつゆの香りなどの微妙な違いを感じ取れれば、あなたも名古屋麺の上級者です!

民芸調でまとめられたいかにもうどん屋らしい店内。小上がりもあるので家族連れでも使いやすい
□ 香流庵
・1976年創業
・名古屋市名東区山の手3-1607
・℡052・774・0368
・11:00~14:00L.O、17:00~20:00L.O
・水曜、第2火曜休
・香流小学校バス停より徒歩5分
・駐車場5台
・50席
・きしめん770円
・きしめん 麺/幅13mm・厚さ1・5mm
・小麦粉/金トビ志賀・カモメ
・ダシ/ムロアジ、宗田ガツオ
・つゆ/ヒゲタ醤油・こいくちしょうゆ、ヤマヤ醸造店・別上生ざら
・ころきしめん 750円
・その他のメニュー
きつねうどん950円、カレーうどん1100円、味噌煮込みうどん1200円、きしめん定食1450円、串カツきしめん定食1500円、味噌カツ定食1550円、玉子丼1000円
※値段はじめデータは2026年6月の取材時のものです。詳細はお店にお問い合わせください
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