うまいきしめんはここにある!~カレー粉はあの名古屋名物と同じ由来!?「勝美屋」
昭和50年代以降広まった名古屋独自のカレーうどん
名古屋で独自の進化を遂げたカレーうどん。全国では、片栗粉でとろみをつけカレー粉を加えた、いわばカレー風味のあんかけうどんが一般的。対して名古屋では、鶏ガラダシのスープに、インドカレーばりにスパイスを駆使してポタージュのようなとろみをつけ、太麺を合わせる独自のスタイルが広く普及しています。この名古屋流カレーうどんは昭和50年代、名古屋市北区にあった店が開発したのが元。これが連日大行列になるほど評判を呼び、その後、弟子筋の店や今でいうインスパイア系の店へと広まり、一大ジャンルを形成するにまでいたりました。
元祖店と同じカレー粉を伝説の職人監修で再現
味の決め手はもちろんカレー粉。そして、名古屋流カレーうどんの元祖店と同じものをもともと使っていた、というのが「勝美屋」です。「祖父がそのカレー粉をつくっていた人と付き合いがあって仕入れていたんです。1人でつくっていてすごく売れていたもんだから、月に一回必要な分だけ分けてもらっていました。父はもっと辛くするために他のカレー粉も混ぜていたんですが、僕は辛くするよりスープで味わいを底上げしたいとそのまま使うようにしたんです」と店主の菰田好典さん。もうひとつの決め手のスープは、鶏ガラに和風ダシを加えたカレーうどん専用のものを仕込んでいるといいます。
しかし、2010年頃に肝心のカレー粉メーカーが廃業。菰田さんは自身でその味を再現しようと数々のカレー粉を取り寄せて研究をくり返します。「カレー粉をつくっていたおじいさんに『よう似せやぁしたな』とほめてもらったんですけど、『いや、まだ違う! 何か足りんでしょう?』と食い下がって何度も味見をしてもらいました。そうしてようやくその人がつくっていたのと同じカレー粉ができたんです」

「勝美屋」が研究を重ねてつくり上げた秘伝のカレー粉
素朴なカレーが柔めのきしめんによくからむ
名古屋流カレーうどんはスパイシーさをやわらげるため太麺を使うのが基本ですが、ここではきしめんを選べるのが特徴。スパイシーさの中にどこかお家カレーのような懐かしさを思わすカレーが幅のある麺にからみつきます。カレーのとろみ、麺のちょっとてろんとした柔らかさによって口当たりが優しく、辛さと小麦の甘味がひとつになって“とぅるん”と口の中に運ばれていきます。辛さはそれほど強くないので、小さな子どもや年配の人でも問題なく食べられるでしょう。
名古屋のきしめんは、濃度の高い塩水でこね、しっかり鍛えるのが特徴。しかし、菰田さんは小麦の香りを活かすためには塩度をやや控え、生地をふみすぎないようにしているそう。優しい柔らかさはその絶妙な控え具合から生まれているというわけです。

カレーきしめん900円。鶏ガラ&ムロアジ・宗田ガツオのWダシで、醤油や片栗粉は使っていない。うどん、ころにもできる
某チェーンが再現したがったつゆも魅力
この麺の風味や食感をシンプルに味わいたい時にはかけきしめんがお薦め。溜まり醤油ベースのつゆは角がなく、ちょっと後ろに引いて麺を引き立ててくれます。聞けば地元のあるラーメンチェーンがきしめん店を出そうと研究していた際、このつゆをコピーしようと社員がくり返し通い詰めていたとか。菰田さんは作り方を惜しげもなく教えたそうですが、再現できなかったのかきしめん店は実現しなかったそうです。

きしめん650円。具はほうれん草、油揚げ、ネギとシンプルで、その分、麺とつゆの魅力をじっくり味わえる
カレー煮込みも絶品の大人気メニュー
もう一品お薦めなのが彩り野菜のカレー煮込みうどん。先のカレー粉の優しい味わいが、ブロッコリー、トマト、切り干し大根、肉厚の油揚げと異なる甘味や酸味、食感の具を包容力豊かに包み込みます。多加水の煮込み麺は、最初はゴツッとしているのですが食べ進むにしたがいもっちり感が出てカレーとの一体感が増してきます。

彩り野菜のカレー煮込み1000円。オリジナルのカレー粉の包容力ある味わいを堪能できる
中心部からはほんの少し離れていることもあるせいか、観光客に“見つかっていない”隠れ名店。筆者はしばしば名古屋めしの食べ歩きツアーで参加者を連れて行くのですが、誰もが「知らなかった!」「おいしい!!」「また来ます!」と驚き、絶賛してくれます。皆さんも一度自分の舌で確かめた上で、その次は麺好きの友人知人に是非“教えて”あげてください。

店主の菰田好典さんは1966年生まれ。祖父と父もうどん屋を営んでいたが、30才で自身の店を構えて独立した。隣は妻の順子さん
■ 勝美屋
・名古屋市東区代官町33-8
・℡052・936・5081
・11:30~14:30、17:30~20:30
・水曜休
・30席
・駐車場 なし(向かい側立体駐車場の駐車補助券あり)
・地下鉄高岳駅より徒歩10分
・麺 幅9mm、厚み2mm
・小麦粉 昭和産業 めんのちから
・つゆ マルカワ醸造・溜まり醤油、ヒガシマル
・ダシ ムロアジ、宗田カツオ
・その他メニュー
ころきしめん650円、ざるきし900円、しのだ800円、みそ煮込み950円、みそカツ丼1300円、きしめん定食1150円、味噌カツ定食1650円
※値段などのデータは2026年5月の取材時のもの
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