きしめんV字回復の原動力!「きしころスタンプラリー」が今年も開催

「きしめん離れ」なんて言葉もしばしば聞かれたのはわずか数年前までのこと。この冬の時代から脱し、V字回復の立役者となったのが「きしころスタンプラリー」だった!
大竹敏之 2026.07.01
誰でも

「きしめん離れ」「絶滅危惧種」が叫ばれた冬の時代

名古屋めしの中でも特に歴史があり、全国的な知名度も高いきしめん。しかし、地元ではちょっと前まで深刻な「きしめん離れ」が進んでいました。

「きしころスタンプラリー」は2026年7月1日~8月31日まで開催。スタンプ台紙は参加各店で配布する他、愛知県めんるい組合HPからダウンロードできる

「きしころスタンプラリー」は2026年7月1日~8月31日まで開催。スタンプ台紙は参加各店で配布する他、愛知県めんるい組合HPからダウンロードできる

打っても売れ残ってしまい、泣く泣く捨てる日も珍しくありませんでした」とは「みそ煮込みのかどまる」の3代目・日比野宏紀さん。そんなきしめん冬の時代が最も厳しかったのは2010年代の初め頃。ちょうど名古屋めしブームが盛り上がってきた時期ですが、きしめんは他の名古屋めしと比べるとインパクトに欠けるせいか、存在感が薄れてしまっていました。乾麺の生産量もピークだった1990年代から6割も減ってしまい、「絶滅危惧種」とすら呼ばれる事態に陥っていました。

大物タレント絶賛で浮上のきっかけに

しかし、この事態の深刻さが、後のV字回復のきっかけにつながります。時は2014年の秋のこと。

「きしめんが絶滅の危機に瀕している、というテーマで、マツコ・デラックスさんの番組で取り上げられることになったんです」と日比野さん。そこでスタジオできしめんを調理することになったのですが、ここで日比野さんがある主張をします。

「温かいきしめんをリクエストされたのですが、それでは当たり前の反応しか得られない。マツコさんを驚かせるには絶対に“ころ”を食べてもらいたい!と訴えたんです」

駅のホームの立ち食いに代表されるようにきしめんは温かいつゆで食べるのが基本。しかし、名古屋では「ころ」と呼ばれる冷たいつゆと合わせる食べ方も親しまれていて、これだと麺がキュッとしまり、きしめん特有の舌の上を滑るような食感をよりダイレクトに感じられます。他地域の人にはあまりなじみがないため、きしめんの魅力と同時に意外性も感じてもらえるハズ・・・という日比野さんの狙いは的中。初めて食べる冷たいきしめんにマツコさんは驚くと同時に絶賛。この様子はSNSにも取り上げられ、その直後からきしころを目当てに店に多くの人が殺到しました。

「若い人らが『めちゃくちゃおいしい!』と食べてくれるんです。これを見て、まだまだきしめんは通用するんだ!と確信しました」(日比野さん)

「きしころスタンプラリー」が名古屋の夏の風物詩に

翌2015年の夏、日比野さんは名古屋市内のうどん店らに声をかけて「きしころスタンプラリー」を企画します。会期は冷たいころきしめんがとりわけおいしく食べられる7~8月の2ヶ月間。5軒分のスタンプを集めると500円の食事券が進呈されるという還元率の高さで(現在は400円券)、お得感もアピールしました。この年は25店舗が参加し、食事券の配布枚数は115枚。単純計算で575杯以上のきしころが食べられたことになります。

以後、この企画は恒例となり、参加するお客の数はほぼ右肩上がり。ここ数年は、参加店舗は40軒ほど、食事券配布枚数は450~460枚台で安定した人気を獲得しています。これまた単純計算ですが、スタンプラリーによって2ヶ月で2300杯前後のきしころが食べられていることになります。

「ラリーをきっかけにきしめんに興味を持ってくれるお客さんが増え、どの店もラリー期間以外でもきしめんがよく出るようになったといっています。店にとってきしめんが“売れるコンテンツ”になり、かつての低迷期からは完全に脱しました」と日比野さん。

「第12回きしころスタンプラリー」参加店の店主たち。右のポスター、タペストリーが参加店の目印

「第12回きしころスタンプラリー」参加店の店主たち。右のポスター、タペストリーが参加店の目印

店ごとの異なる個性を食べ歩きで体験

今年も第12回目となる「きしころスタンプラリー」が7月1日にスタート。名古屋市内を中心に、愛知、岐阜、さらに東京を含む38店舗が参加します。実行委員長を務める日比野さんに、今年の特色や楽しみ方をお聞きしました。

「注目ポイントは、今年オープンしたはなまるうどん系列の『きしめんズズズ』2店舗の参加。若者に人気の店なので、きしめんファンの裾野が広がることを期待しています。参加店も年々力を入れるようになっていて、ラリー期間限定メニューを開発する店が何軒もある。ラリーに参加するのは味に自信があるということなので、どの店でもそれぞれ異なるおいしさを感じてもらえると思いますよ」

参加店の対象メニューを見ても「ローストビーフきしめん」「生湯葉ころきしめん」「ひやひやカレーころ」「ざるラッキー」など、味の想像がつかず興味をそそられるものが多数。そしてトッピングだけでなく、きしめんは幅も厚みも食感も店ごとに異なり、店を巡れば巡るほど麺の幅と同じように幅広~い魅力を体感することができるのです。

「ひらのや」(名古屋市東区)のえびおろしきしめん。きしころはトッピングなどの自由度も高く、広く知られている花かつおが踊っている温かいきしめんとはまったく異なる味わい、食感、ボリューム感を楽しむことができる

「ひらのや」(名古屋市東区)のえびおろしきしめん。きしころはトッピングなどの自由度も高く、広く知られている花かつおが踊っている温かいきしめんとはまったく異なる味わい、食感、ボリューム感を楽しむことができる

ラリーで何軒かの店をめぐれば、きしめんがV字回復した理由が分かるはず。他地域から来る人は体験したことのなかったきしめんの多様性にふれることができ、またいまだにきしめんが不人気だと思い込んでいる地元の人は、しばらく食べていなかったことを後悔するはずです!

※写真撮影/すべて筆者

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