うまいきしめんはここにある! 麺じゃなくて面!? 衝撃の超幅広麺~「芳乃家」
今、トレンドの「幅広きしめん」とは?
「こ、これは・・・麺というより面!?」 初めての人は誰もが驚く・・・というか何度も食べていても見るたびに「何じゃこりゃ?」という気持ちになる「芳乃家」(名古屋市昭和区)の超・幅広きしめん。その幅たるや実に5㎝! どう見てもするするとすすれるとは思えない重量感は、麺というよりまるで餅のよう、いやこれはもはやメンはメンでも「面」ではないか・・・?
名古屋のきしめんシーンで近年大きなトレンドとなっているのが幅広きしめんです。そもそもきしめんという言葉自体“幅が広い麺”という意味なので一種の二重表現になるのですが、そこは広い心でお許し願いたいところ。その最大の特徴である麺の幅は従来8mm~1㎝程度なのですが、最近はこの目安をはるかに超える幅2㎝以上の麺を出す店が増えているのです。

きしめん700円。超幅広の麺から変わり種と思ってしまいがちだが、ふちの赤い名古屋かまぼこ、油揚げ、ほうれん草、かつおぶしの具の取り合わせはきしめんの王道
幅広化は激戦時代の生き残り戦略だった!
「芳乃家」はこの幅広きしめんを名古屋市内でいち早く取り入れた先駆け。それだけに幅広さも群を抜いています。いつ頃から、なぜこんなに幅広くしたのでしょうか?
「3年間他の店で小僧をやって、21歳で実家のこの店に戻ってから少しずつ幅を広げていきました。「より大胆に幅広くしていったのは20年くらい前からです」と2代目の野嶋道雄さん。ではその理由は?
「当時は、周りにうどん屋がいっぱいあったんです。でも、きしめんなんて馬鹿にされていて、いわば超脇役。力を入れている店もなかった。また、どの店もすごく忙しかったので製麺屋から麺を取っている店が多く、うちの父もそうでした。私は修業先で手打ちを教わってきたので、手打ちのきしめんでなおかつ幅広くすれば、分かりやすくインパクトを出せるだろうと考えたんです」
幅広化は昭和50年代のうどん屋激戦期に家業を継いだ2代目の生き残り戦略だったのです。

昭和27年(頃)の開店時の記念写真。四国から出てきた野崎さんの両親(後列左から2、3人目)が、姉夫婦(前列右)が営む名古屋市中村区のうどん屋で修行した後、現在の場所で開業した
もっちもちの食感は唯一無二。でも実は・・・
見た目はもちろんですが、食感もまた一般的なきしめんとはまったく違います。幅広い上に厚みもあってもっちもち。普通の麺のように勢いよくすするのではなく、むしゃむしゃと噛んで味わう感じです。表面積が大きい分、つゆののりがよいのも特徴。溜まり醤油のうまみの濃さとそれに負けないムロアジ主体のパンチのあるダシ。加水率が高くダシをグッ~と引き込む手打ちの持ち味が、幅広にすることでいっそう活きているのです。この麺とつゆの一体感から、超幅広麺が決して奇をてらっているのではないことが分かります。

2代目店主の野嶋道雄さん。麺と麺がくっつかないよう丁寧にそっと湯にくぐらせる
常識外れに幅広い麺、それがどっぷりひたる名古屋伝統のつゆ。異端と正統が共存するその魅力を正しく理解するには、実はそれなりのきしめん経験値が必要です。オーソドックスなきしめんをよく知った上でないと、見た目のインパクトばかりに意識が向いてしまうからです。できればノーマルなきしめんを何軒かで味わった上で、そのとびきりの個性を楽しんでもらいたい一杯なのです。
もちろんビギナーでも見た目の迫力を十分に楽しめますが、上級者になるとその奥に潜む真の魅力にも気づくことができる。見た目通りに間口は広く、それでいて奥が深いきしめんです。

いかにも昔ながらの麺類食堂といった趣の店内。6卓で24席。筆文字の品書きも老舗然とした味がある
・名古屋市昭和区桜山町2-38
・℡052・841・6884
・11:30~13:30、17:30~19:30
・月曜休
・24席
・地下鉄桜山駅より徒歩3分
・駐車場3台
・きしめん・麺/幅5cm、厚み2mm
・小麦粉/金トビ志賀 カモメ
・つゆ/ヤマヤ 溜まり醤油
・ダシ/ムロアジ、鯖
・その他のメニュー/味噌煮込みきしめん900円、カレーうどん800円、えびおろしそば1150円、志の田丼670円、そば定食1000円
※価格などデータはすべて取材時2026年3月のものです。変更がある場合もございますので詳細は店舗に直接お問い合わせください。
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